本研究では,環境や使用者へ大きな負荷を与えず,実世界において簡便に幾何学図形を描画し,かつ描かれた図形によって作られた空間の計測を可能にする,新しいモジュール型デバイスを提案しています.これは,レーザー光を出力する小型モジュールを空間内に自由に配置することで図形を描画するとともに,これらのモジュール群が形成する閉空間で物体検知を実現するものです.これにより床面を可能な限り阻害せず,空間内での物体検知が可能になるだけでなく,LEDやスピーカによる視聴覚刺激を通じて人の移動・跳躍などといった運動計測,及び次の動作位置の指示や認識結果の提示を実現しています.これにより子ども達が広場に線を引いて,遊びの空間を作るような新たな実世界インタラクションを実現することを目指しています.
各モジュールは手の平程度の大きさで,一方向にレーザー光を照射する機能を持っています.このモジュールを複数用意し,使用者は空間内に描きたい図形の頂点にモジュールを置き,レーザー光により各辺を構成することで自由に閉空間を描くことが出来ます.モジュールが閉空間を形成すると,その空間内において物体の検出を開始します.モジュール群による頂点とレーザー光による辺で形成された空間は,光を用いて計測可能領域を視覚的に示しており,この形成された閉空間を“ エアタイル”と呼んでいます.なお,ここで形成できる閉空間は全ての頂点を1 度ずつ通る閉路,つまりハミルトン閉路を仮定した図形である.生成したエアタイルによって,領域への人の出入りが検知できたり.複数のエアタイルで交信することで人の移動を計測することが可能です.
これまでに実際にモジュールを試作することで実現可能性を示し,評価実験によって空間計測が可能であることを明らかにしました.また,複数のエアタイルの協調動作や動作計測への応用により,提案手法の有効性を示しています.これにより,実世界において手軽に空間計測が可能になるため,既存の計測機器や,地面や壁面の模様・表示及びゲームデバイス等と組み合わせることも可能です.現在,運動意欲を向上するゲームの製作を検討中です.また,測量時の指標提示,カメラキャリブレーション,イベントでの区画表示などの実世界における簡便な情報提示装置としての応用も考えられます.さらに,イルミネーションやゲームなど,新たな芸術表現の創出もあわせて検討しています.
年度: 2010-
メンバー:
飯田 一樹
池内隼生
内山俊朗
鈴木 健嗣
共同研究:
筑波大学芸術系
デンマーク工科大学
Tags:
- サイバニクス・拡張生体技術
- 社会的相互作用研究