本研究では,自身の身体を子供のカラダに戻し,日々の生活を新たな視点・身体を通して知覚することで,新たな発見や体験の提供,身体の制約により誘発される創造的な行動や感覚を喚起・帰還することを目指しています.頭部に視線変換機構を取り付け,手指に把持動作を縮小する受動外骨格を装着することで子供の視覚と触力覚を再現するものです.ブース内の机の上に置いた果物やスマートフォン,コップをつかんで,その掴みにくさや,机の上の覗きにくさ,あるいは世界の圧迫感を体験してもらうことで,子供の頃の感覚,子供にとっての使用感を体験することが可能になります.
人は自らの身体を能動的に動かすことで,外界との間に多感覚の相互作用が発生し,自己と外界の存在を知覚認知することができます.このため,身長や視点の位置,手指が小さいといった身体的制約が存在するといった点において,身体性の異なる大人と子供では知覚する世界には大きな差異が存在します.我々はこの子供の身体的制約を,外界との本質的な相互作用を可能な限り阻害することなく体験できるようにすることで,子供が知覚する世界の体験や,創造的行動が誘発される機会を提供できるシステムを構築できると考えています.
人が世界を知覚・認知するための代表的な感覚器及び効果器である目と手指に着目し,これらの身体像(Body Image, 人が無意識に持つ身体の全体像) を自然に拡張するため,力覚インタラクションの整合性や時間的・空間的整合性の保存に重点をおいた手法を提案しています.使用者は頭部にヘッドマウントディスプレイを,腰部にカメラベルトを装着することで子供の視点を体験できます.また,手に手指外骨格を装着することで,子供の手を通して物の掴み易さなどを確かめる事ができます.
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