体育館は,皆にとって子供の頃から大切な場所でした.小学校,中学校,高等学校から大学まで,入学式や卒業式といった晴れの舞台を祝う社会的な場所であり,体育やスポーツを通じて心身を鍛える場所でもありました.表現力を伸長し創造力を育む学芸会や音楽会,日頃の努力の成果を発表する展覧会や発表会,また地域の人々が交流する大事な場所でもありました.このように,体育館は,人々の社会的活動を行う場として重要な役割を担ってきました.
我々のソーシャル・イメージングのプロジェクトでは,体育館という場の未来をつくる「ミライの体育館™」という試みを行っています.ここでは,筑波大学附属大塚特別支援学校(以後,大塚学校)と協力し,小学部から高等部までの現場の先生方と連携しながら,古い体育館を改修しています.まずは,子ども達の行動に合わせて床や道具などに様々な情報を映し出し,行動のガイドとして使うためのプロジェクション・マッピングの設備を取り付けました.また,子ども達の集団行動を計測するための高画質カメラと物体の形状をとらえる特別なカメラを天井に設置しました.なお,一般に体育館の床面は鏡面反射が強く,映像を投影する際に視認性が著しく低くなってしまうため,これを防ぐためのコーティングを施しました.また,自動開閉カーテンを取り入れることで体育館内の照度を調整できる仕組みを整えました.これらを用いて,子ども達の行動に合わせた環境からの適切な刺激として,視覚や聴覚によるフィードバックを提示する試みを行っています.これは,体育館という広い空間に,文字や図形といったバーチャルな情報を加えたり,自分たちで絵を書いたり,夜の星座や森の動物,海の魚たちを重ね合わせたりすることで,新たな空間を構築する複合現実感という技術の研究です.自閉症スペクトラム障害児(以後,自閉症児)など,視覚情報に頼る特性を持つ小児に対して,視覚的に思考を促したり理解を深めたりするようなインタラクティブな情報提示が可能になります.さらに,このような視覚教示は,通常学級においても,多様な教育的ニーズに応えるツールとなるものと考えています.
年度: 2017-
メンバー:
髙橋 一誠
大木 美加
バティスト・ブロー
北原 格
鈴木 健嗣
共同研究:
附属大塚特別支援学校
Tags:
- 社会的相互作用研究
本研究は,科学技術振興機構の支援を受けて行われております.