一般的に加齢に伴い飲み込みの能力すなわち嚥下機能の低下が見られ,高齢者の日常的な食事の妨げとなっている.また,片麻痺や脳卒中などの障害によって嚥下障害の症状が顕れる場合も多く,患者数は増加の傾向にある.このような嚥下障害の患者は誤嚥を引き起こす可能性が高いため,窒息の危険性を高め,口腔内の雑菌が肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎の原因となる.このような嚥下障害における肺炎は再発性が高く,悪化により死亡する例も見られる.そのため,嚥下障害では障害の程度を早期に知り,そこから適した治療,リハビリテーションを行う事が重要である.また嚥下機能の低下により摂食できる食事が制限されるなど,QOL の低下にも大きな影響がある.
そこで本研究では,嚥下音に基づく嚥下機能計測により,患者の行動を妨げることなく実時間で嚥下機能を計測,記録するための新しい装着型インタフェースを提案する. なお,嚥下障害者のリハビリテーションでは摂食行動中に患者の嚥下が正常であるかという情報は非常に重要である. 食事などの日常動作中に計測が可能であり,即座に嚥下状態の情報提示や伝達を可能っとするとともに,患者自身が自らの状態を常に把握しその能力の指標を得ることで,嚥下障害者のリハビリテーションの向上を目指す.
ここでは,頚部に接触型のマイクを装着し, マイクの音響波形の特徴量と周波数特徴より嚥下音とその他の音の区別を行い,患者の嚥下状態の推定を行う.接触型のマイクは,筋電位の計測よりもはるかに手軽に計測が可能であり,嚥下音はi:喉頭蓋が閉じる音,ii:食塊が食道を通過する音,iii 喉頭蓋の開く音から構成されるため,口腔内の食塊の動きを追従し,それに伴う嚥下状態を把握できると考える.また, リハビリテーションにて利用する際,介護師のみならず本人にも正常な嚥下が行われたかはわかりづらい. そこで開発するインタフェースに, 正常な嚥下が行われたかどうかの情報提示を行う機能を付加する.このように特別な機器を使用せず,患者の動きを拘束してしまうようなことがなく,嚥下機能の測定と同時に情報提示を行うことで,嚥下リハビリテーションの指針となるような嚥下能力測定インタフェースの開発を目指す.
年度: 2010-
メンバー:
長柄 昌浩
松下 明
鈴木 健嗣
共同研究:
筑波大学附属病院
(脳神経外科)
リハビリテーション部
看護科学(成人看護学)
学外一般病院
Tags:
- サイバニクス・拡張生体技術
本研究の一部は,厚生労働省科学研究費補助金の支援を受けて行われております.