顔の表情は, 感情や体調といった様々な心理・生理的情報を含んでおり, 実世界において人間同士のコミュニケーションにおいて重要な役割を担っている. 表情は, 顔の各部位の形状や相対位置といった物理的特徴に加え, 動作や表情表出に伴う形状変化,頭部姿勢などの運動も重要であり, これらの複合的な要因によりその印象が定まると言える. 心身の状態だけでなく, 各個人はそれぞれ固有な表情表出を行っている. 近年の顔の表情解析は, 特定の一瞬の表情だけでなく, 表情形成に至る時系列変動に関する動態解析が行われている.
表情の動態解析は表情に起因する筋活動や骨格モデルを利用するため, 筋電信号計測による生理信号解析や, 顔の物理的特徴抽出やマーカなどによる画像解析の2手法が一般的である. 表情知覚においては,形状情報のみならず,頭部姿勢や光源方向の変化により印象が大きく変化することが知られている.能面の知覚や化粧による印象操作などは,これを利用した代表的な例であり,形状変化は同様でも,知覚される表情や印象が異なると言える.このように,表情知覚は,顔面神経を通じて伝搬する生体電位信号と生理的特性,表情筋活動により皮膚表面に生じる表情変化の物理特性,及び知覚する人間が有する心理特性が複合的に影響する.本研究では,心理特性によらず形状特徴を計測することで表情の物理特性を得るとともに,表情の印象といった心理特性,表情筋活動といった生理特性との関連性を見出すことを目指す.
本研究では, 距離画像センサを用いて直接に顔面形状を取得するとともに, 頭部姿勢計測と表情の動態解析を
同時にかつ非接触で行う手法を提案する. 形状による表情の動態解析により,これまでにない表情表出の特徴を定量化する手法を試みる. 表情の動態解析は心身状態によって変動することを考慮すると, 実世界において簡便に行われることが望まれるとともに, 表情の動態解析のためには, 頭部姿勢の変動に対して頑健であることが必要不可欠である. そこで, まず顔面の形状を利用した頭部姿勢計測を行い姿勢ベクトルを計算し, その頭部姿勢を利用して形状を回転変換することで, 正面方向の顔面形状を取得することを試みる. 正面方向の顔面形状及びその変動から表情の動態解析を行うことによって, 頭部姿勢によらない表情の動態解析を通じて実世界で簡便にかつ表情筋活動のモデル化を実現することが可能となる.
年度: 2010-
メンバー:
伊勢崎 隆司
鈴木 健嗣
共同研究:
民間企業 (化粧品)
Tags:
- 次世代知能化技術
本研究の一部は,文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われております.
本研究は、グローバルCOEプログラム「サイバニクス:人・機械・情報系の融合複合」の支援を受けて行われております.