本研究では,様々な運転シーンの中でも比較的難易度が高く,かつ日常的に必要となる場面の多い後ろ向き駐車を対象とし,運転技量育成のための運転支援システムの開発を行っている.具体的には,ステアリングを介した力覚呈示により適切な操作を直接的に運転者に教示し,人に自然な認知を促すと共に,主体的な操作を誘発することで駐車運転技量の習熟を促進させる,新しい運転行動支援手法を提案する.これは,例えば自動車教習所での運転訓練時に,学習者の握るステアリングを教官が隣席から操ることで,必要に応じたステアリング操作を体感的に習得する過程に着想を得た,直感的かつ効果的な運転技量育成のための手法である.一般に,免許取得後は駐車を含めた運転に関する専門的な指導や助言を受ける機会が少ない.そのため,現状では初心運転者は日頃の運転を通して独学で上達する必要があり,習熟には一般的に長い時間を要する.そこで,提案する支援システムによって運転者の駐車行動を能動的に支援することで,日々の運転を通じた運転技量の習熟を促進することが可能となり,それによる初心運転者の事故率低下及び安全性の向上に資すると期待される.
提案手法は,ステアリングやペダルといった運転操作を例示やフィードバックによって運転者に直接的に教示する「操作支援」のアプローチに基づく手法である.ここでは,ステアリングを介した力覚呈示という認知的負荷の少ない教示方法により,駐車行動中に適切なステアリング操作を支援するシステムを開発した.本手法は,人の運転特性を計測するための被験者実験により得られた知見に基づいて支援方法を考案し,提案手法の有効性を検証するための実験環境としてスケールカー・シミュレータを開発した.これらを用いて,支援システムの介入による運転技量の習熟過程への影響を,被験者実験によって定量的に評価を行い,提案する支援手法によって技量向上を促進出来る可能性を示した.
年度: 2010-
メンバー:
廣川 暢一
鈴木 健嗣
共同研究:
上杉 直久
北川 朋子
古郡 了
民間企業 (自動車)
Tags:
- 認知ロボティクス
- 次世代知能化技術
本研究は,民間企業(自動車)との共同研究により行われております.