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嗅覚を拡張する
人の認知特性を考慮した装着型嗅覚提示機器
Wolf: A Wearable Olfactometer


人々の知覚経験は,複雑な感覚間の相互作用を通して形成されることが知られている.各感覚から得られる情報は一般に相補的で,相互に矛盾しないため,無意識に起こる感覚間の相互作用が代表的な人の認知特性であると言える.そこで本研究では,特に人が能動的に行動することにより刺激を得る環境を考え,情報機械技術によりこれらの感覚間の相互作用を拡張する手法について検討を行っている.

人の五感はその刺激の種類により物理的・化学的信号の知覚からなる2つに大別される.ここでは,化学的信号を扱う感覚として嗅覚を取り上げ,人による能動的な行動に基づき適切な刺激を提示することにより,人の認知特性を明らかにすることを目的としている.

化学的信号を扱う嗅覚や味覚は物理的信号を扱う視・聴・触覚に対する感覚提示に比べ,感覚刺激提示が難しい.特に嗅覚は,味覚に甘味・酸味・塩味・苦味・うま味といった5つの基本味が存在するのに対して,未だそういった基本要素は解明されていない.嗅覚刺激は空間的に人間と連続した位置関係にあり,また風味と表現されるように味覚の認知にも大きな影響を及ぼすなど,他感覚へ与える影響は無視できるものではない.嗅覚刺激提示には一般的にオルファクトメータと呼ばれる嗅覚刺激の濃度や流量を制御,調整して提示する嗅覚刺激提示機器が用いられる.

嗅覚刺激については匂いを求めるsniffing動作に着目し,対応した感覚を刺激する装着型機器を開発する.これにより身体動作と多感覚情報に関わる人の認知特性に介入し,認知の変容や想起,拡張を目指すとともに,人の認知特性の理解について新たな知見を得ることを目指す.ここでは,装着型嗅覚刺激提示機器により通常呼吸時にいくつかの条件で嗅覚刺激を与えることで,匂いを嗅ぐ動作という身体動作と嗅覚刺激提示方法の対応関係について調査を行った.このように,身体動作に応じて聴覚・嗅覚刺激を行う新たな装着型機器の開発を通じて,人間の認知特性の理解について新たな知見を得たとともに,これら特性を利用することで,聴覚・触覚以外の認知の変容や拡張,及び身体動作の変化をもたらすことが可能であることを示す.


年度: 2011-

メンバー:
廣渡 貴大
鈴木 健嗣

共同研究:
中野 詩織 (心理)
綾部 早穂 (心理)


Tags:
- サイバニクス・拡張生体技術
- 次世代知能化技術

UT本研究は,本学の研究組織(人間系心理学域)との共同研究により行われております.

 

発表論文他
  • 上杉 直久,廣川 暢一,北川 朋子,古郡 了,鈴木 健嗣,駐車運転の技量向上を促進する運転支援システムの研究,2011年度自動車技術会関東支部学術研究講演会,東京,2012.
  • Hirokawa, M., Uesugi, N., Furugori, S., Kitagawa, T. and Suzuki, K., "A Haptic Instruction based Assisted Driving System for Training the Reverse Parking,"Proc. of 2012 IEEE Intl. Conf. on Robotics and Automation (ICRA), pp. 3713-3718, 2012.


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