ヒトにおける力の伝達構造は,筋肉・腱・骨格からなる.ここでは,筋肉により発揮された張力が腱を介して骨格に伝えられる.逆に外力を受けた場合は,弾性体である腱により衝撃が直接骨格に伝わりにくくなっている.つまり,ヒトは外力や衝撃に対して柔軟な構造を持ち,歩行動作など日常的な動作場面ではその柔軟性を適切に変えることで,自然な動作を実現している.そこで,力を伝達すべき時は硬くなり,力を受け流したい時は柔軟になるような可変剛性特性を有する機構をもつロボットを構成することにより外部の物体と接触する場面や人間と共に作業する場面において,柔軟に動作することができると考えられる.
そこで本研究では,アクチュエータ部分の剛性を可変にするのではなく,本来剛体を仮定するリンク機構の剛性を可変として制御する新たな手法を提案する.ここでは,これを実現するために可変剛性リンクを開発するとともに,開発したリンクと既存のモータ・リンク機構を組み合わせることで新たな可変剛性システムを提供する.さらに,提案する機構を上肢動作支援へ適用することで可変剛性リンクの有効性を検証する.
開発するVSLink はロッド,シリンダ,ピストン,圧縮コイルばねで構成し,シリンダ内に磁性流体を満たす.ピストンには磁場を生成するためのコイルを巻く.シリンダとピストン間は磁気ギャップを設けており,コイルに印加する電流値を変化させることにより,ギャップ内の磁性流体粘性が変化することで流動抵抗が変化し,ロッドが動く際の動作が変化する.発生する磁場はコイルに印加する電流により制御できるため,可変剛性を実現することができる.これまでに,開発したリンクの特性評価及び,上肢装具への適用することでを通じて,動作支援への応用の可能性を示している.従来の可変剛性特性を有する拮抗駆動型と比較して,既存のリンク機構,装具などのシステムに対して簡便に適用することが可能であり,小型・軽量化において優位性を有している.
年度: 2011-
メンバー:
大場 隆宏
門根 秀樹
鈴木 健嗣
共同研究:
Tags:
- 認知ロボティクス