世界中の多くの下肢運動機能障害者の移動支援機器として車椅子が広く普及しており,特に上体が健常であれば手動式の車椅子が使用され,社会生活を送る上で必要不可欠な移動機能を補っています.また,上体が健常な車椅子使用者は車を利用して遠方まで外出することも多く,そのような者にとっては車載の容易さという観点から小型かつ軽量な車椅子が望ましい.そこで我々は,下肢による歩行や移動は困難であるが,上体は健常である者を支援対象者とし,車載可能性を考慮して小型化,軽量化を目指し,使用者単独での階段昇降を可能とする新たな移動機器を提案しています.
この移動機器は平地移動機構,階段昇降機構及び受動型姿勢変換機構から構成されている.平地移動機構として前方に手動式車輪,後方にキャスタ付回転脚を備えることで,一般的な車椅子と同等の平地移動性能を保っています.また階段昇降機構は回転脚とキャスタ輪を組み合わせた回転脚機構と,それを操作するレバーにより構成し,使用者の上体運動のみで駆動することが可能です.さらに受動型姿勢変換機構により平地移動時,階段昇降時の二つの異なる姿勢をとることができます.またこの姿勢変換機構により,使用者の目線を下げるように機構を設計することで,階段昇降時の落下事故に対する使用者の不安を軽減可能であると考えています.
これまで,使用者の上体機能を活用し階段昇降を実現する新しい移動機器での階段を安全に降りる理論を提案し,実機での検証実験を通してその実現可能性を示しています. 現在は開発した移動機器での階段昇降において,公共空間に存在する多くの段差,階段に対応できるよう検証を進めています.
年度: 2014-
メンバー:
佐々木 海
江口 洋丞
鈴木 健嗣
共同研究:
Tags:
- サイバニクス・拡張生体技術
本研究の一部は,文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われております.